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NPO法人ウェルビーイング設立30周年報告 10月19日東京青年館でNPO法人ウェルビーイング設立30周年の記念シンポジウム「変える! 変わる!〜新たなるパラダイムシフトに向けて〜」を開催いたしました。参加者は、懇親会 83名、シンポジウム全体会171名、分科会173名と、たくさんの方にご参加いただきました。 感謝いたします。まずは第一報をお知らせしたいと思います。 【開会挨拶〜全体会の報告】 シンポジウムは中村修一大会会長の格調高い挨拶からはじまりました。会長の挨拶の中で 二つの壁を強調されました。一つは医療従事者の中で治療に携わるものと保健に携わるもの の間(例えば、医者と看護師)にギャップがあること。もう一つは住民参加といいながらも その参加がまだなされていないという問題。この壁を明確にするシンポジウムになったか どうか、今後の展開が楽しみです。 柏木実行委員長はこのシンポジウムが開催された経緯を説明されました。 全体会は歯科関係者の意識はどうしたら変わるのか?変えられるのか〜健康や幸せを支援 できる、志をもった仲間作りをめざして〜と題して以下の方々が発表をされました。 文元先生はヘルスプロモーションの考え方に出会うことで来院者本人の気持ちが一番。 来院者が主役ときづくことで、同じ人間として歯科医という仮面をはずし、ようやく自分 の思う医療が実践できつつあるという経過を語って下さいました。彼の意識の変化に 参加者が共感をしました。 2番手の藤田歯科医院の藤田先生と3人のスタッフの物語は、以下に協働してヘルス プロモーションを診療室にシステムとして取り入れ実践していったかというスタッフ と先生の奮戦記でもありました。 3人目は保健師吉村さんが地域で歯科保健プロジェクトを立ち上げ、今まで行政と歯科医師 はお願いする人とお願いされる人という関係しか築けなかったのに、住民と一緒のテーブル につくことで歯科医が同じ目線でプロジェクトに関わってくれたという住民との協働の 実践例を報告してくださいました。 【分科会1-1(大学教育)報告】 この分科会は、開業医、学生、教官の異なる立場からの参加者を対象に2つのセッション を企画した。まずセッション1では三者が持つ「社会から求められている歯科医師」のイメー ジにそれぞれ違いがあるとの仮説を立て、3つのグループにそれぞれの「社会から求められる 歯科医師像」をKJ法で出してもらった。次にイメージされた歯科医師になるために必要な能力 をノミナルプロセスメソッドで優先順位をつけた。 セッション2ではセッション1で見えてきた歯科医師像を実現するため大学教育はどうあれば いいかをグループワークにより明らかにすることを目的とした。 セッション1:『求められる歯科医師像とは?』 開業医グループ 参加者4名が大筋で合意したのは「まず一人一人の人間性が土台になる」ということであった。 その上で「人の健康をサポートできる」歯科医師像が浮かび上がった。グループワークを進めて いく中で"求められる像"は次の3つに集約された。 1)患者を癒すことが出来る。 2)安心感を与える。 3)辛い時の救世主となれる。 そして、これらの像に近づくための基本が人間性である、との結論に達した。その人間性を 高めるための前提条件として以下のものが挙げられた。その項目毎に各自が重要度の点数を 与え、結果高い得点のものから次の項目が抽出された。 1)コミュニケーションスキル 2)他の医療機関や行政・地域と連携し、保健活動を推進する能力(ファシリテート能力) 3)治療技術がしっかりしていて、将来まで見据えた治療と指導が出来る 4)専門的な知識も併わせ持っている。 さらに、今度はこれらの条件を満たすために何が必要なのか?ということをデイスカッション した。歯の事以外の話を積極的に聴き、家族単位や友人関係などを基に、その患者を取り巻く 環境からアプローチし、分かりやすく説明出来る能力をもち、痛みやその他のニーズにも対応 可能であること。 これらの項目の重要度を投票してもらった結果上位に選ばれたものは「コミュニケーション スキル」「ファシリテート能力」「専門的な知識」の3項目であった。 学生グループ グループワークの結果、求められる歯科医師像は「真の意味でのかかりつけ歯科医となり、 来院する患者さんだけに目を向けず住民の健康のために地域活動に参加し地域の人々とコミュニ ケーションができる歯科医」となった。 「求められる歯科医」となるために必要な条件として以下のものが挙げられた。 1)コミュニケーション技法 「患者さんの立場に立ち理解できる」、「一人一人のニーズにあった治療ができる」、 「立場や職業のめがねを外せる」「予防の大切さをきちんと伝えることができる」などの意見が 出された。 2)治療の技術 「スキルの高い歯科医師」「技術のみならず知識も伴った歯科医師」「口腔と全身の関係が 理解できている」などの意見が出された。 3)「人間性」が上記2項目のさらに土台として必要なものと位置付けられた。 歯科医師自身の人間性を高めるためには生涯学習・学びが必要であるとの結論に達した。 具体的には「絶えず成長しようという意志をもち続けること」、「人あたりが、患者以外 にも優れている人」、「器量のある人」などの意見が出された。 これらの項目の重要度を投票してもらった結果は以下の通りである。 1位:「歯科医師自身の人間性」 2位:「知識・技術」 3位:「知識の充実」 4位:「生涯学習・学び」 学生グループも開業医グループと同じく「歯科医自身の人間性」の重要性が確認された。 このグループで特徴的なことは「学習」「学び」という能動的な姿勢を示すことばが表現された ことである。 教官グループ 教官グループでは求めらる歯科医像とは「地域の患者さんから信頼される歯科医」であると いう結果となった。このことを実現させるための具体的な行動として以下の2項目に集約された。 1)地域歯科保健への貢献 「すべての住民の口腔の健康を考える」、「地域の歯口の健康に責任をもつ」、「地域で保健 活動をすることによって地域歯科保健へ貢献できる」などの意見が出された。 2)歯の健康管理 「包括的な医療概念基づき」、「歯の寿命の延伸を第一とし」、「予防中心の治療を行い」、 「歯の健康管理にも心を配る」などの意見が出された。 これらの歯科医師像に近づくための条件として「視野と態度」と「必要な能力」というふたつ の条件に集約された。 1)歯科医師が持つべき視野と態度は、「適切な保健情報を提供し」、「社会経済的な視野を 持ち」、「患者さんのニーズに対応できる」の3点に集約された。具体的には以下のような意見 が出された。 ・ second opinionが述べられるような適切な保健情報を提供する ・ 社会経済的要因を考慮できる ・ 社会状況の変化に対応できる社会経済的視野を持つ ・ 診療態度は痛い時にすぐ、丁寧に診る ・ 患者のニーズに対応できる」という意見が出された。 2) 歯科医師が備えるべき能力は「自分で考える力を持っている」、「コミュニケーション 能力」、「確実な治療技術」の3点に集約された。 これらの項目の重要度を投票してもらった結果は以下の通りである。 1位:「自分で考える力」 2位:「コミュニケーション能力」 3位:「社会経済的視野」 開業医や学生のグループと違い教官グループでは専門的な技術や知識より自分で考える力を 重要視した点にあった。 セッション1のまとめ 開業医グループは「人の健康をサポートできる」歯科医師になるための条件としてまず第一 に自分自身の人間性を高め、次にコミュニケーション能力と地域においてファシリテーターが できる能力や専門的な知識を挙げた。 学生グループは「かかりつけ歯科医としての役目を果たす一方、住民の健康のために地域 活動ができる」歯科医師になるためには開業医グループと同様に人間性の豊かさを挙げていた。 必要な能力も開業医グループと同様に技術や知識を挙げていたが、特徴的であったのは学習と 学びが重要であるとした点である。これを受けて教官グループは必要な条件として「自ら考え る力」を挙げていた。 これらをまとめると社会から求められる歯科医師とは「患者さんのニーズに対して社会経済 的なことも考慮しつつ、確かな技術と知識を提供できる。また治療に偏ることなく健康づくり のサポーターとしての機能も果たし、診療室の中だけに留まることなく地域においてもでも 歯科保健活動を拡げることができる」歯科医師となる。そうなるためには「歯科の知識や技術 のみならず、コミュニケーションやファシリテーションの技法も身につけ、自ら考える力も 持ち、生涯学習する姿勢を保ち、人間性を高めることが必要である」となる。 セッション2ではこの結果を受けて大学での教育のあり方をグループワークで検討した。 【分科会2-1 地域における乳幼児の歯科保健】 参加者には架空の町まなづる町の町民として、乳幼児う蝕の問題を検討する歯科保健協議会 の第2回目、第3回目を体験してもらった。最初に町の概況についての説明や第1回目の振り 返りを行った。参加者のほとんどが歯科医師と歯科衛生士ということで、運営スタッフは 司会者兼行政関係者、歯科医師1名、歯科衛生士1名、残りは乳幼児のウ蝕予防に関わりをもつ 住民という設定にしてグループワーク形式で進めた。 途中、盛り上がってくると、リスクファクターに詳しい母親がでてきたり、歯科関係者の 研修を行うべきという意見がでたり、参加者から住民の方ですね?と突っ込みが入る時もあった が、楽しい雰囲気でグループワークは盛り上がった。発表では、同じテーマで話し合ったのにも 関わらず、グループによって異なる意見が出た。参加者からは、「答えは1つではないことを 学んだ」「地元の行政担当者に今日のことを話したい」「母親学級や乳健でお母さん達と話 したい」という感想があった。 【分科会2-2 幼稚園・保育園での歯科保健】 この分科会では、次の2つを目標に行いました。 1.園関係者(先生、保護者)と私の考える「歯科保健問題と園医の仕事に違いがあるのか、 ないのか?」を知ること 2.問題解決のための対策の決め方を学ぶこと 「午前中力を出しきった」と話しながらも、軽妙なテンポでリーダーを努める藤田先生を 中心に、30名がグループワークを行いました。参加者の感想は以下のようなものです。 ・ディスカッションすることで、たくさんのことを知り、視野が広がることを学びました ・人は皆考え方や思いが違うし、また近いということが分かりました ・たくさんの違う意見がまとまるのかなと思いましたが、優先順位をつけ合意的に決める手法 を学ぶことができてよかったです ・明日から月1回は、園に遊びに行って仲良くなりたいと思います 参加者一人一人の感動的な感想を聞き、予定時間を少し過ぎ終わりとなりました。 【分科会2-3 学校歯科保健】 ねらいを「学校歯科保健への取り組み方を身につけ、上手に取り組んでみようという気を 起こさせる」とした。そのために@ズレを確認し、それを認める、A学校の制度やマンパワー を知る、B評価方法を知る、の順に作業や参加者とのやり取りを行ってすすめた。 歯科医師9名、歯科衛生士9名の計18名の参加があった。文部科学省とは壁があると言われて いるが行政からも6名の参加があった。 進行については時間の遅れが目立ち始めた時点でスケジュールの変更を行ったが、事前の 打ち合わせを十分に行っていたこともあって、ねらいとするところは伝えられた。しかしやる気 を起こさせるについては今一つの感があった。 ふりかえりシートには「何となく気になっていた学校関係者との歯科保健に対する知識や認識 にズレが、今日はっきりと確認できた」「学習援助型の教育や各種評価法のことを知ってよか った」「2×2表を学校関係者との話し合いに使いたい」などがみられた。(筒井昭仁) 【分科会2-4 産業歯科保健】 準備の時には、どういう方が参加されて、満足して貰えるにはどうしたら良いかがわからず 不安でした。参加者がわかってくると、なんとどなたも一流企業の歯科室にお勤めの人、そして 産業歯科保健にかかわっている先生方!これはこちらが何かを提供するのではなくて、参加者 の皆さんの話をただ聞くだけでおいしい思いをできるだろうと妙な安心感と期待感を持って いました。 いざ、ふたを開けてみると、なんとも準備不足!! しかしながら会社の事情を良く知る方々から現場のリアルなご意見がたくさん出て、私のずるい 目的は十分達成できましたが、うまくまとめられないまま時間に追われて進行していくばかりでした。 にもかかわらず、会社からの視点、社員の視点、歯科保健担当者からの視点を客観的データ とともに盛り込んだプレゼン資料はそれはそれは素晴らしいものでした。 参加者に助けられた分科会でしたが、問題点がはっきり見えた点も含め、ホットな分科会と なりました。参加者の皆様に感謝!! 【分科会2-5 予防歯科を展開するにあたっての仲間づくりから組織づくり】 今回の「仲間づくりから組織づくり」の分科会は、5つの分科会の中でも一番の人気があり、 内容も白熱したものでした。7つの組織からの設立目的の報告から始まり、現状報告や、抱えて いる問題点についてそれぞれの立場から意見があげられました。発足して数年の団体から、数十年 続いている団体までありましたが、やはり継続させていくためには、目的意識の明確化と行動力、 そして行動を起こした後の結果評価がきちんとなされているかがポイントとなっているようです。 同じ志を持ち、同じベクトルを持つことによって、さらに何か良い事をしているという充実感が そこに加われば、ますます推進力が増していく…、それぞれの団体の熱い思いが伝わる内容でした。 この分科会の成否は、参加者それぞれの仲間づくりのきっかけとなり、新たな推進力のステップに なれたかどうかにかかっています。分科会後のあなたの回りに、変化はありましたか? |
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