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MIDORIモデルとは?

1 MIDORIモデルの概要

 このモデルは社会診断から順次、疫学診断→行動・環境診断→教育的・組織診断→運営・政策診断と進みます。ここまではいわゆるPLAN DO SEE の流れのASSESSMENTとPLANの部分(プリシード)に相当します。運営・政策診断まで進んだら、今度は実施→経過評価→影響評価→結果評価とDOとSEEの部分(プロシード)を実施します。

 このモデルの大きな特徴は個人や集団が好ましいライフスタイルを身につけるために必要な3つの因子(準備・強化・実現)について分析し、その分析結果を基に教育的なものと環境的なものを組み合わせて展開するところにあります。

2モデルの構造

 モデルの構造は図1のようになっています。図のそれぞれのボックスは影響を与える要因(原因)と影響を受ける要因(結果)が左から右へ鎖で繋がれたように並んでいます(因果の連鎖)。一番右のQOLのボックスが最終的な結果となります。そのQOLに直接影響を与えている健康要因と環境要因および保健行動(ライフスタイル)がその左に矢印で繋がれています。
 保健行動はQOLに直接影響を与えると共に環境要因に対して相互に影響を与えていることがわかります。また保健行動は準備要因・強化要因・実現要因の3つの要因から直接影響を受けています。環境要因は実現要因から影響を受けています。そして一番左のヘルスプローモーションは健康教育と政策から構成され直接、準備要因・強化要因・実現要因の3つの要因に影響を与えています。

各要因の概説
1)QOL
 QOLは生活の質、人生の質、生命の質と訳すことが出来ます。ヘルスプロモーションモーションの最終目的は人生や生活の質を高めることですから、対象となる住民の望む暮らしのあり方を知る必要があります。これらは主観的なものでありインタビューなどを通して質的な調査で明らかにしていきます。
2)健康課題
 決定された最終のゴールであるQOLに直接影響を与えている健康問題で定量的に評価できる指標(健康指標)で表します。
3)ライフスタイル
 健康課題やQOLに影響を与える生活習慣で科学的にその因果関係が証明されたものを項目としてあげる必要があります。乳歯むし歯のようにそのリスク因子が明確なものは問題がないのですが、まだ充分にリスク因子が証明されてない健康問題に関しては一般的に考えられているものから仮説を立てます。あげられる項目の例としては以下のようなものがあげられます。
4)環境要因
 特定されたライフスタイルや健康問題、QOLに直接影響を与えている要因で、自然環境や社会環境などで直接介入が困難なものです。実現要因の変化や集団のライフスタイルの変化などにより間接的な介入により変化が期待できるものを指します。例としては以下のようなものが考えられます。
5)準備要因
 ある特定の保健行動を起こすために本人に事前に準備されるべき条件です。前提要因と表現されることもあります。具体的にはその健康問題についての知識、その保健行動をやってみようという態度、健康問題を解決する行動を起こすべきという信念、その保健行動をやれそうだという自信などがあげられます。すなわち従来の健康教育モデルである、KAPモデル、保健信念モデル、自己効力感(セルフエフィカシー)などがこのボックスに入ります。
6)強化因子
 一端起こった好ましい保健行動は持続されなければ意味がありません。行動心理学では目的の行動をより強固にして安定化させるためにはその行動の過程や行動の直後にプラスの刺激が必要であるとしています。具体的には、行動中やその直後のプラスの刺激・報酬(爽快感、達成感、ご褒美)、家族や周りの人たちの反応(情緒的支援)、生活の場面でのサポート(手段的支援)があります。
7)実現因子
 準備要因が整い、いざその行動を実現させようとした時に必要な要因が実現要因です。具体的にはその行動を実現させるために必要な受け皿や身近な設備、実践に必要な本人の技術などです。以下に例を示します。

3 MIDORIモデルのおおまかな流れ

第1段階 社会診断
 みんなでめざすゴールである「生活の質の向上」を明確にし,その指標を設定します。そのためには取り組もうとして事業の対象者は誰なのか,目的は何なのかを明確にすることが必要です。事業の目的,言い換えれば,事業によって達成しようとしているめざす姿とは,どんな状況なのかを専門職だけでなく,広く関係者と議論し、さらには事業の対象者である当事者から意見を聞きます。複数の項目が抽出された場合には,どれを優先するのか優先順位を決めることも必要です。こうしたプロセスにはフォーカス・グループ・インタビューやデルファイ法が用いられます。
第2段階 疫学診断
 めざすゴールを実現させるために「生活の質の向上」を妨げている健康課題やその指標を明確にし,達成すべき目標値を設定します。抽出された健康問題を定量的に評価するための指標(健康指標)は何かを考え,既存の指標がある場合には,その情報をどこで入手するかを検討します。また,複数の健康問題が抽出された場合には,健康問題の頻度とQOLへの影響度の強さ,改善可能性に基づいて,優先順位の高いものは何かを決定します。
第3段階 行動・環境診断
 QOLの向上と健康問題との解決につながるライフスタイルと環境要因に優先順位を付け、目的が達成できるための目標値を設定します。通常、行動診断と環境診断の2つの診断を行います。
1)行動診断
 多くの場合、複数の要因が抽出されますので,どの生活習慣や保健行動に最も優先的に取り組むべきかを決定するために,優先順位を検討することが必要です。優先順位はQOLや健康問題との関連性(因果関係)の強さ,対象集団における頻度,そして,実現可能性の3つの項目をもとに優先順位とその目標値を決定します。
2)環境診断
 環境要因は,健康目標のみならず,行動や生活習慣,そしてQOLにも影響を及ぼす可能性を持っています。環境目標も,行動目標とほぼ同様の手順で決定されますが,介入によって変更が困難な環境因子(例えば,家族構成など)についての情報を集めることも重要です。行動の改善可能性を考える際に,こうした環境を考慮することが必要だからです。
第4段階 教育・組織診断
 目標としたライフスタイルと環境要因を改善するためにはどのような条件を満たせばよいのかを準備要因、強化要因、実現要因に分けて検討します。具体的には、本人に知っておいてほしい知識、周りの人が協力すべきこと、提供すべき保健サ?ビスや受け皿の整備、整備すべき環境や制度などです。これらの要因を検討する過程で協力が必要な組織の診断も併せて行います。すなわち地域の中にどのような組織があり、どんなことが期待できるのか、その組織の活動状況はどうであるかなどです。
第5段階 運営組織診断
 具体的な実施プランを策定し、予算や人および資源を確保します。教育組織診断で抽出された条件を満たすために,既存の健康教育プログラムがきちんと機能していたのかを検証し,望ましい健康教育プログラムを実行するために必要な予算や人的資源についての検討,現時点での利用可能な資源の査定,プログラムを実施する際に解決しなければならない障害についての検討を行います。
第6段階 実施
 運営政策診断で策定されたプランを順次、実行に移します。
第7段階 プロセス評価
 プランが実行に移されると同時に評価が始まります。プロセス評価ではプログラムを進めていくうえで入手できる様々な情報を基に実施のプロセスを以下のように評価します。
1)プログラム進行状況
2)資源(コスト、マンパワー等)
3)スタッフの仕事ぶり
4)広報活動状況
5)データ収集の方法
6)受益者や協力組織の反応、参加率
7)最終目標と行動目標の実現可能性や具体性 
 これらの評価結果をもとに必要ならばプログラムを改善したり目標値の変更を行います。
第8段階 影響評価
 実施の中程で健康教育や健康政策の実施の影響を受け準備・強化・実現の各要因や保健行動がどの程度変化したかを評価します。
第9段階 結果評価
 最後に結果としてどの程度QOLと健康課題が改善されたかを評価します。


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